試合当日に向けたコンディショニング
はじめに
今回は、サッカー選手が試合当日にパフォーマンスを発揮できるためのコンディション作りについて説明します。
運動をする際に用いられる栄養素には、炭水化物(グリコーゲン)、タンパク質(アミノ酸)、脂肪があります。しかしサッカーの試合のように長時間にわたり、大きなエネルギーを捻出する際に最も重要となるのは、「グリコーゲン」なのです。
運動中のエネルギーとしてのグリコーゲン
サッカーの試合は45分の前後半+ロスタイム、合計で少なくとも90分間以上は動き続けることになります。
そんな長時間、何の対策もなしにプレーを続けていると、試合途中で体内のエネルギーがなくなってしまいます。それではせっかくウエイトトレーニングで体を作ったり、練習で技術を磨いてきたのにその実力が発揮できなくなってしまいます。
長時間の運動において、そのエネルギー源として最も重要な物はグリコーゲンです。これはグルコース(ブドウ糖)が複数結合した物で、主に肝臓や筋肉に貯蔵され、そこからエネルギーとして使用されます。なので、よく「スポーツの試合の前には消化の速い炭水化物を摂取しましょう」といった話を聞いたことがあるのではないかと思います。
グリコーゲンを体内に貯蔵するために
グリコーゲンがどれくらい体内に蓄えられるかというと、体重にもよりますが、肝臓に約75g、筋肉中に約400gと言われています。グリコーゲンは1gあたりおよそ4キロカロリーなので、単純計算で最大1,900キロカロリー分が体内に貯蔵できます。しかしこれだけだと試合終盤の大事な場面でエネルギー切れを起こす可能性があります。残念ながら直前の炭水化物摂取だけでは、長時間にわたる試合では最後までもたないのです。
つまり、「そもそも体内に貯蔵するグリコーゲンの量を、一時的に増やすこと」が必要となります。それにより試合当日、体内の貯蔵グリコーゲン絶対量を増やし、エネルギー持続時間を延ばします。
そこでスポーツ選手によく用いられている方法が、「カーボローディング(グリコーゲンローディングとも言います)」です。
カーボローディング(グリコーゲンローディング)は、その名の通りグリコーゲンを体内に多く蓄えるための手法を言います。マラソンやロードレースなどの超長時間におよぶ高強度の運動の際に絶大な効果を発揮しますが、サッカーを始めとした多くのフィールド競技でもその効果が期待できます。
グリコーゲンは前述の通り、肝臓や筋肉内に貯蔵されます。試合などの激しくかつ長時間続く運動の際には、脂肪やアミノ酸よりも筋肉内のグリコーゲン貯蔵量が重要になります。
カーボローディングをすることによって、通常の2倍近くのグリコーゲンを体内に貯蔵できるとのデータもあるようです。これにより、試合中のエネルギーを長時間確保し、パフォーマンスの低下を抑えることができます。
カーボローディングのやり方は、昔から用いられていた方法と、最近の方法の2種類があります。どちらも「試合の前に運動によるグリコーゲンの消費を抑え、炭水化物の摂取量を増やす」というのがコンセプトです。
〈従来型〉
試合当日の約1週間前~4日前:
・炭水化物の摂取を控える。
・高強度のトレーニングを行う。
『目的』体内の貯蔵グリコーゲンを枯渇させる。
試合当日の3日前~前日:
・炭水化物摂取量を大幅に増やす。
・運動をせず、体を休息させる。
『目的』一度体内のグリコーゲンを枯渇させ、リバウンド効果で貯蔵量を増やす。
この方法により、通常の約2倍近くのグリコーゲンを貯蔵できます。
デメリットとしては、①グリコーゲン貯蔵を減らしながら高強度のトレーニングが必要なため、過度な疲労や怪我のリスクがある②炭水化物摂取量が急激に変わる事で体調を崩す可能性がある。 ことがあげられます。
〈現在型〉
試合当日の約1週間前~4日前:
・炭水化物の制限はしない。
・運動量はやや減らす。
『目的』炭水化物摂取量は制限せず、グリコーゲンの消費を抑える。
試合当日の3日前~前日:
・炭水化物の摂取量を増やす。
・運動をせず、体を休息させる。
『目的』グリコーゲンの消費を抑えつつ、摂取量を増やして貯蔵量を増やす。
こちらは現在よく用いられている方法でリバウンド効果を狙わないため、従来型に比べるとグリコーゲン貯蔵量は90%ほどと言われています。
しかしメリットとして、①炭水化物の制限や無理なトレーニングの必要がない②調整がしやすい。 ことがあげられます。
どちらも通常に比べて大量のグリコーゲン貯蔵が見込めますが、体へのデメリットの軽減という観点から、現在型が好まれる傾向にあります。
終わりに
試合当日のコンディショニングとして、グリコーゲンの必要性と、カーボローディングに関して説明してきました。日頃のトレーニングや練習と同様に、試合本番に向けてコンディションを整える事も非常に重要です。
大事な試合などに向けて、是非試してみてください。